2016年12月21日水曜日

「貧困家庭で育った僕自身知りたかった」学生たちが語り合った、子どもの貧困とは?

2016年12月3日東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターで「あすのば子ども委員会」が開かれました。子ども委員会は、2015年に、子どもの貧困対策センターあすのばの組織として発足し、大学生を中心とした学生たちによって運営されています。

今回の子ども委員会では貧困家庭の高校生、大学生を中心に約40名が参加しました。学生たちが集まり、どのようなことが話し合われたのでしょうか。委員会の企画・運営に関わってきたあすのば学生理事・佐藤寛太さん(名城大学4年)に聞きました。



あすのば子ども委員会のようす
(出典: あすのばFacebookページ

見過ごされてきた思いを知りたい

「子ども委員会では、社会への問題提起とか、具体的な解決策とか、そういう成果のようなものを出そうとはしませんでした。感じたことや考えていることを自由に吐き出してほしかったのです。小さな困りごとや、もやもやした思いのかけらを集めることが、今の僕たちができることなのではないか。そこから僕らが考え、行動につなげていく、そういう流れを作っていきたいと考えました。」

「話し合いは6名ほどのグループごとに行われました。各グループが好きなキーワードを選んで自由に話し合ってもらいます。」

「僕たちが用意したキーワードは、
「奨学金、進学、地方と都市、学園生活、働くとは、困りごととは、ファッション、アルバイト、部活、流行、SNS、恋愛」
でした。あえて「貧困」という言葉をキーワードから外したのは、貧困という言葉で自分たちを一括りにしたくないと考えたからです。貧困という括りを取り払ったことで、本当にいろいろな話ができましたし、多くの引っ掛かりを僕たちに残したと思います。」


働くことは、家庭をあきらめること?

「話し合いでは、子育てしながら働くことを受け入れてくれる職場がまだ少なく、特にひとり親の働く環境は厳しいと話す子がいました。都市よりも地方に住んでいる子が強く感じているようです。」

「貧困世帯の低い賃金で働いている親は、労働時間も長くなるので、子どもとコミュニケーションを取る時間が圧倒的に少なくなります。親は学校からの手紙に目を通そうと思っていても、見落としてしまうことがあります。仕事が忙しくて時間がないのです。それで、小学生くらいであれば、学校で必要なものを親に用意してもらえないまま、学校に行くことになりますし、中学生や高校生になると進路の相談も親にできません。それは子どもにとっては、つらいことです。」

「僕自身の場合、母親が一人で家計を支えていましたが、母は非正規雇用の低い賃金で働くしかありませんでした。僕たち子どもの世話だけでなく、祖父の日常生活の世話も母がしていたので、正社員となってフルタイムで働くことができなかったのです。正社員になって収入を増やすことと僕たちや祖父のための家庭生活は両立できませんでした。」

「学校から帰ってきた子どもが親と話したり、夕食を共にできたりするような働き方ができて、世帯の年収が400万円あればいいのに、と具体的な金額を挙げる子もいました。その場にいた子たちはこれに満たない家庭がほとんどだったので、夢というか理想を話している気持ちだったと思います。」

大学に行けないのは家が貧しいから?努力が足りないから? 

「家庭の経済環境で進路の幅が狭められていると感じている子は多いと、今回の話し合いで実感しました。」

「経済的に苦しいのであれば進学に目を向けずに働けばいい、と言われることもあります。最初から働くしか道はない、と言われてしまうと、進学するために勉強して努力しようという気持ちも起きない、あきらめてしまう、と正直な気持ちを話す子もいました。」

「確かに今も、貸与型の奨学金制度はありますし、独自の奨学金制度を設けている大学もあります。しかし、それでも「どうせ自分なんて」と進学をあきらめるしかないと高校生に思わせてしまう状況があるのではないかと思います。実際、奨学金の返済を考えると躊躇してしまうこともあるだろうし、国立大学であっても学費は高いです。」

「一方で、友達が大学に行くから自分も進学したいと安易に思ってしまっているかもしれない、と自分を戒めるような意見もありました。進路の選択は誰にとっても迷うものだと思いますが、家庭の状況が制約とならずに自分で進路が選択できるようになってほしいです。」


社会とは「厳しい」ものなのか?

子ども委員会で語り合われた話からは、食べるものや着るものが全くないわけではないけれど、生活のいろいろな局面で、自分はあきらめるしかないと言い聞かせる子どもの姿が浮かびあがってきます。「仕事と家庭の両立」に困難を感じたり、「自分らしい進路の選択」に悩んだり。貧困であるかに関わらず、多くの人にも通じる悩みであるように思いました。それは家庭の経済状況が苦しい彼らに、より切実に「あきらめるしかない」問題として降りかかっています。

「そんなことお金がないなら我慢すればいい、何とかしたいならもっと自分で努力すればいい。社会ってそういうものだと言ってしまえばそれまでなのですが。」
自分を含めた多くの参加者がそういう「もやもやした思い」を抱えていた、と佐藤さんは最後に話していました。

社会とはそういう厳しいものだと彼らに言うべきなのでしょうか。

誰にとっても、もっと生きやすい明日がある、という思いで「あすのば子ども委員会」は、これからも活動していきます。


子ども委員会は現在、全国で街頭募金の呼びかけを行っています
(出典: あすのばウェブサイト


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子どもの貧困対策センター公益財団法人あすのば
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野口由美子

2016年12月15日木曜日

乳児用液体ミルク、日本ではやっぱり必要ない?

災害時に海外から救援物資として届けられたことがきっかけとなり、日本でも知られるようになった乳児用液体ミルク。その製造販売について政府が検討を始め、日本も「解禁へ」という方向にあるようです。

日本での液体ミルクのメリットについて、

  • 災害時の備え
  • 男性の育児参加を促進
といった観点がニュースなどで強調されているのをよく見ませんか。

地震などの災害に備えることも、男性の育児参加を促進することも、日本では大切なことと考えられているので説得力があるのかもしれません。


でも、液体ミルクを、非常食として、とか、育児に慣れない人のために、とか、「特別な時」の利点を強調するのはなぜなのでしょう。非常時の需要は限られたものでしかないでしょうから、特別な時のために各家庭に買い置きしておく程度だったら、日本でわざわざ製造する必要もないように思います。普通に考えたら、非常時に発揮するメリットよりも、「日常生活」の中でのメリットの方が、より大きな需要を生むのではないかと疑問に思いました。


日本の状況を理解するためにもなるかと思い、改めてイギリスのミルク事情について調べて記事を書きました。ご覧いただけるとうれしいです。

ママのための子育て情報WEBマガジン「ママスタセレクト」

使ってみたい? 乳児用液体ミルク。一番気になる値段について考えてみた 

記事の中では、普及にはやはり値段が一番問題になるだろうということで、値段の話が中心になっていますが、当然ながら、液体ミルクに対する認識もイギリスは違うようでした。

液体ミルクは日常生活の中で以下のメリットが大きいと思います。

  • 外出時や夜中など、調乳の負担軽減
  • 粉ミルクより高い安全性
イギリスでは、災害の備えや男性のためというより、日常生活のメリットが広く認識されているから、普及しているようです。

日本では、「母乳をあげるべき」母親が液体ミルクを使って「楽をする」ことに対して厳しい視線があるように感じます。それに配慮しているのか、このようなメリットはあまり大きな声で語られていないのかもしれません。


改めて、日本の母親へのプレッシャーの大きさを感じます。多くの母親は、本当に一生懸命赤ちゃんの世話をしているわけで、母乳か粉ミルクか液体ミルクかということ関係なく、えらい!と私は思っていますが、何か違うようです。

それでも、液体ミルクは日本でも普及してほしいですし、きっとそうなると思います。


野口由美子


2016年12月8日木曜日

子どもの病気、ネットで検索したらダメですか

日本で医療情報を扱うサイトの信頼性が問題となり、閉鎖されるニュースがありました。子どもを持つ親だったら、自分のことよりも、子どもの病気をネットで調べることが多いのではないでしょうか。そんな観点で記事を書きました。ご覧いただけるとうれしいです。

ママのための子育て情報WEBマガジン 「ママスタセレクト」


記事の中で、英語などで病気のキーワード検索をしてみて、海外の医療情報サイトを親の視点で比べてみました。

イギリス、オランダでは、国の機関や全国組織の医師会のような代表的機関が積極的に情報提供していました。私のような素人でも、知りたい情報にたどり着けるように、しかもわかりやすい内容のサイトを運営していました。ネットでの医療情報の発信にむしろ力を入れているようです。

日本でも似たようなものはあるのですが、地方自治体が独自に提供していたり、病院が単独で運営していたり、情報が分散している上に、検索していてすぐに見つからないことが多い印象を受けます。比較してみて気が付きましたが、日本の状況はひどいです。

厚生労働省が子どもの親向けに提供する医療情報としては、小児救急でんわ相談が一番しっかりやろうとしている印象を受けました。夜間でも医師や看護師に直接電話で子どもの病気の相談ができるというのは心強いものです。

しかし、そういう電話相談があったとしても、子どもが病気になった時はネットで検索するのが先、という人が多いのではないでしょうか。私自身、小児救急でんわ相談に電話したことは1回だけ、ネットで病気を検索した回数は数えきれないくらいあります。

ネットで得られる情報は確かに玉石混交で、問題も多いですが、ネットの情報に全く頼らない生活に戻ることはもうできないと思います。日本でもそういう今の時代に合った情報提供が整備されなくてはならないと思います。


野口由美子

2016年12月1日木曜日

サンタクロースのプレゼントを待つ子どもたちと、私の作戦

早いもので、もう12月。クリスマスが近づいてきました。我が家は、クリスマスにサンタクロースからプレゼントが来るので、親の私たちもこの時期は準備に余念がありません。

以前、ネットでプレゼントを注文したらお店に在庫がなく、違う商品に変えてくれない?と連絡がきたり、ある時は宅急便が隣の家に届いてしまい、隣の人が持ってきてくれたものの、子どもに搬入を見られないかとハラハラしたり、大きいプレゼントを日中私1人で隠し場所を確保するのに一苦労したり、いつもドキドキしながら準備します。毎年クリスマスの朝に子どもがプレゼントを開けるまで、親の方がむしろ楽しんでいるかもしれません。

今年も子どもたちはサンタクロースに手紙を書きました。手紙を書くのも楽しい時間です。






今のところ、サンタクロースがプレゼントを持って来ていると思っている子どもたち、この子たちもいつかは説明が必要になるでしょうし、大きくなったらプレゼントをあげる側になってほしいものです。どう説明してあげたらいいのでしょうか。

サンタクロースのことについて、こんな記事を書きました。

ママのための子育て情報WEBマガジン「ママスタセレクト」
いつまでサンタクロースを信じている? 子どもの夢を大切にする「卒業」の仕方

サンタクロースはたくさんの子どもたちにプレゼントを配るのが大変だから、大きくなった子は小さい子に譲ってあげて、という説明の仕方を教えてもらいました。私もこの「卒業」方法を実践しようと心に決めたのですが、記事の中にあるように子どもたちの同意は得られませんでした。来年以降もこの作戦を継続するつもりです。

サンタクロースは、プレゼントをもらう側にもあげる側にも、夢があります。我が家は今年も準備万端です。


野口由美子

2016年11月25日金曜日

子どもの貧困 全国集会開催へ バッシングを乗り越え、子どもたちの声を伝えたい

公益財団法人あすのばは、子どもの貧困対策のさらなる進展のために、124日(日)、東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターにて、全国集会を開催します。

前回のあすのば全国集会のようす1
(出典:子どもの貧困対策センターあすのばフェイスブックページ


前回のあすのば全国集会のようす2
(出典:子どもの貧困対策センターあすのばフェイスブックページ


あすのばは、子どもが「センター」(真ん中)であるべきという考えのもと、子ども自身の声を大切にしながら活動しています。この全国集会では、学生たちが中心となって、当事者である子どもたちの声を直接伝えようと準備を進めています。学生理事として活動している佐藤寛太さん(名城大学4年)に、その内容について聞きました。

集会の準備を進める佐藤さん(中央)たち
(出典:子どもの貧困対策に子どもの声を!第2回あすのば全国集会フェイスブックページ

当事者の高校生、大学生が登壇し、自らの経験を語ります

「相対的貧困は見えにくく、外からはわかりにくいものです。当事者が自ら声を上げることもなかなかできないと思います。ちょうど夏に、テレビで報道された貧困の高校生に対するバッシングがあり、貧困世帯の子ども自身が声を上げることは今まで以上に難しくなりました。それでも勇気を出して登壇する彼らの声は、貴重だと思います。」

貧困にある子どもの日常生活の「困りごと」を伝えます

「日常生活の中で子どもが感じる困難から見えてくる問題があるのではないか、と思っています。全国集会の前日に「子ども委員会」を開き、当事者の高校生、大学生が気楽に話し合う場を設けます。そこで共有された思いや困難を全国集会で報告する予定です。どんな内容になるかは当日までわかりません。たとえば、僕自身の経験なのですが、高校生の時、パソコンを使う宿題が出たのですが、家にパソコンがなくて困ったことがあります。些細なことかもしれないのですが、子どもたちが日常生活の本音を拾い上げることができるのは僕たちだと思っています。」

給付型奨学金について学生によるディスカッションを行います

「給付型奨学金については今とても注目されているトピックです。今の奨学金制度について、卒業後の返済が苦しいということを問題にすると、「返さなくてはならないことはわかっていたはずだから、借りた方が悪い」というような批判もあります。しかし、借りる高校生に対してきちんと説明されていたかというと、必ずしもそうではないのではないか、と疑問が残ります。学生が自分の経験をベースに、奨学金制度の問題点や解決策について話を深めていきたいです。」

佐藤さん(左端)と共に当日ディスカッションに参加する学生たち
(出典:子どもの貧困対策に子どもの声を!第2回あすのば全国集会フェイスブックページ

佐藤さん自身も3歳の時に父を亡くし、現在は奨学金を利用して大学に進学しています。忙しい学生生活の合間を縫って、全国集会の準備に取り組んでいます。子どもが置き去りにならないために、大人である私たちが彼らの声に耳を傾けることが大切ではないでしょうか。

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参加者募集中です。是非会場に来てみてください。
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野口由美子

2016年11月10日木曜日

今の時代にこそ、おすすめ。子どもに人気の本「ファーブル昆虫記」

読書の秋ですね。うちでは最近、上の子がファーブル昆虫記に夢中です。毎晩パパと一緒に読んでいます。

ファーブル昆虫記、懐かしいと思いませんか。私も小学生の時に読みました。私が子どもの時は青少年向きに翻訳されたものが中心で、当時の私には少し難しく、面白いけれど読みにくいと思いながら読んでいました。今はもっと翻訳の種類が増えたようで、小学校低学年向けのやさしいものもあります。

試行錯誤しながら虫たちの生態を探っていく話は、特に虫が好きでなかった私にも面白かったです。「なぜだろう」という素朴な疑問や、虫たちの生きる知恵に心から感動し、その素晴らしさを伝える語り口は、子どもが素直に楽しめるようです。


今の時代にこそ読んでもらいたい

今、ファーブル昆虫記を読んでみると、別の発見があります。

子どもが大好きなタマコロガシ(フンコロガシ)の話にこんなくだりがありました。
あるとき、わたしは、タマコロガシにして書かれた本を、よんでみました。そこには、こう、かいてありました。
「タマコロガシのたまのなかには、たまごがはいっています。タマコロガシは、ウマのふんのたまのなかに、自分のたまごをうみつけて、それを、ころころ、ころがしていくのです。」

ファーブルはその本を読んだ感想をこう述べています。
なかなか、おもしろいはなしです。でも、なんだか、へんですね。こんちゅうのたまごというものは、とても、やわらかいのです。ふんのたまのなかに、うみつけて、ごろごろ、ころがしたら、きずがついて、しんでしまうでしょう。
こんちゅうのおかあさんは、そんな、むちゃなことは、しないはずです。

そして、ファーブルは続けます。
ひとつ、ほんとうかどうか、しらべてみましょう。わたしは、タマコロガシが、ころがしているたまを、とりあげて、ひとつひとつ、こわしてみました。・・・
たまごは、ひとつも、はいっていませんでした。
おもったとおりです。あの本にかいていることは、しんようできません。きっと、(たぶん、そうだろう。)くらいで、いいかげんに、かいたのでしょう。

パパと一緒にこの話を読んでいた上の子は、なんとなく聞き流している様子だったみたいです。本を中断して、パパが質問しました。
「インターネットに書いてあることは全部本当だと思う?何でも信じるの?」
「うん、だって本当だもん。」
「でも、ほら。本に書いてあったことが嘘だったんだって。本やインターネットで読んだものも、本当じゃないことがあるんだよ。」
しかし、そうおもっただけなら、さっきの本をかいた人と、おなじです。じぶんの目で、ちゃんと、みとどけなくてはなりません。

「ユーチューブで見たものだって本当じゃないかもしれないんだよ。噓を言うつもりがなくても間違えてしまうことだってあるしね。」
最近ユーチューブの話ばかりの子どものことを少し心配していました。

「どうしたらいいの?」
「ファーブルみたいに自分で確かめてみることが大切じゃない?もしできなくても、別の人がなんて言っているか調べてみるとか。そういうことを考えなくちゃ。」

ファーブル昆虫記の中には、本に書いてあることや他の人が信じていることをそのまま信用せず、ファーブルが自ら確かめる場面が幾度となく出てきます。

子どもたちはインターネットなどいろいろなところから得た情報をそのまま信じてしまうようです(大人である私も、情報に振り回されていることがあるのでは、とはっとしますが)。情報を何でも鵜呑みにしていいのか、一緒に考えるきっかけになりました。


ファーブルの家まで行ってきました!

すっかりファーブル昆虫記が気に入った私たち家族は、この秋にファーブルの家まで行ってきました。

マルセイユから秋ののどかな南フランスをドライブし、セリニャンという小さな村にたどり着きました。その村にファーブルが晩年過ごした家があります。ファーブル昆虫記の大部分はここで書かれたそうです。


ファーブルの家の入口。




ファーブルの家。記念館になっていて、収集した標本などが展示されています。


 ファーブルが昆虫観察をした庭をずっと散策していました。木や草花がたくさん植えられていますが、家のお庭の割には、手入れが行き届いている様子ではなく、いわゆるガーデニングから程遠い感じがしました。でもその方が、昆虫たちも暮らしやすいだろうし、植物ものびのびしているようにさえ見えます。ゆったりとした時間が流れていました。


庭の一角にタマコロガシの像がありました。


子どもたちもずっと庭を歩き回っていました。


ファーブルの本が、子どもの心にも残るものであったらいいな、と思います。


引用: 「新版ファーブルこんちゅう記1 タマコロガシものがたり」 小林清之介・作 横内襄・絵 (小峰書店)


野口由美子

2016年11月3日木曜日

ハロウィン翌日のゴミ問題(オランダ編)

日本でも、最近ハロウィンのイベントがたくさん増えたようですね。私が今住んでいるオランダも、日本と同じように、ハロウィンの習慣がない国です。近所の家に突然行って「トリック・オア・トリート!」なんてやりません。

アムステルダムの一角だけがハロウィン一色

ただ、アムステルダムの南エリアの一角だけ、ハロウィン当日は仮装をした人々であふれかえっています。私も初めて見た時は、何が起きているのかびっくりしましたが、個人が企画してやっているイベントだと聞いてさらに驚きました。

そこは、あるアメリカ人家族が中心となってボランティアの運営でハロウィンが開催されています。アメリカで盛大なハロウィンをオランダでもやろう、と、毎年メールと口コミで参加者を募り、南エリアでキャンディーを配る家を募集します。参加者は、子ども毎に参加費を払い、キャンディーの費用を賄います。当日は、決められた時間から、キャンディーをもらえる家が記された地図を見ながら、家々を回ります。




年々規模が大きくなり、今年は100件以上の家でキャンディーが配られていました。私の子どもたちは1時間半かけて歩き回り、獲得したお菓子は40個以上、子どもたちにとっては毎年楽しみなイベントです。

翌日、主催者から届いたメール

次の日になって、主催者から、参加者宛てにメールが届きました。ハロウィンイベントのエリアにお菓子の紙くずが散乱して、道が汚くなったため、ゴミ拾いを呼び掛けるものでした。
今年は過去最高の参加者があり、キャンディーを配るボランティアも地元のオランダ人がたくさん加わってくれたのに、ハロウィンが終わった後、街がこんなに汚くなってしまったら、どう思いますか?もうハロウィンに参加したくないと思われても仕方ないのでは?
子どもにとっていい機会になるだろう、と私は早速子どもを連れて、歩道のゴミ拾いをしました。



お菓子集めには熱心だった子どもも、ゴミ拾いはせいぜい10分で
「まだやらなくちゃダメ?ハロウィンはたくさん来ていたのに、みんなやっていないじゃん。」
とハロウィンの勢いは全くありません。
「ハロウィンをやって、こんなに道が汚くなったら住んでいる人たちは嫌でしょ。こんなだったら、来年からハロウィンできなくなるかもしれないよ。」
とりあえず、協力要請のあった50メートルの歩道のゴミを拾いました。子どもにわかってもらうには、実際にゴミ拾いをするのが効果的だったようです。



ゴミ問題はどこでも深刻?

あとで、今年参加した子のお母さん何人かとこのことを話してみたのですが、ゴミ拾いに積極的な人は少ない印象でした。多分来年からは翌日のゴミ拾いもハロウィンと一緒に最初から計画されて、ボランティアの募集があるのかな、と思いました。日本だったら、ゴミは自分で持ち帰ること!と呼びかけそうなものですが、そういう考えはあまりないようです。

日本でも渋谷などでハロウィン翌日に散乱していたゴミが問題になったと聞きました。アムステルダムよりも渋谷の方が規模も大きいので、そのまま比べられないのですが、来年のハロウィンはどちらの街がきれいか、見てみたい気がします。


野口由美子


2016年10月26日水曜日

母乳育児に失敗、で気が付いたこと

出産自体、人生を変えるような大きな出来事なのですが、その後も次から次へと新しい体験が待っています。母乳育児はその中でも特別重要な体験だと思います。

ママのための子育て情報WEBマガジン「ママスタセレクト」に、母乳育児についての記事を掲載していただきました。ご覧いただけるとうれしいです。

私の母乳育児失敗談に、助産師さんから思わぬ一言

タイトルにある通り、私の母乳育児は上手くいきませんでした。上の子は2ヶ月で断念、下の子は最初からミルクと混合でした。母乳育児が素晴らしいのは確かなことで、私は子どもに申し訳ないような思いがありました。

でも、今、冷静に当時のことを思い出すと、私の母乳育児に対する思いは、もはや「信仰」の域でこだわり過ぎていたように思います。ブログやウェブマガジン(私もそういうところで情報発信している身ですが)、掲示板、本や雑誌も。今はたくさんの情報にあふれていて、信じるに値する「これが正解」な情報にいつも囲まれています。

そういう「信仰」が育児のハードルをどんどん上げてしまっているような気がします。
「どうすべきか」は言えるのに、
「あなたはどうしたいの?」
という質問には答えられなくなっていました。情報が簡単に手に入るのは便利なようで、実は情報に振り回されて、私は不自由になっていたかもしれないな、と思いました。

今は時々、自分に聞いてみるようにしています。
「私自身はどうしたいの?」


野口由美子

2016年10月18日火曜日

赤ちゃんの夜泣き、海外では放置する?本当に聞いてみた

子育てというのは、文化的なものなので、場所が変われば、そのスタイルは違います。文化に優劣をつけられないように、子育てのやり方もどの国のものがいい、と一概に言うことはできないです。どの国も、今の親の世代による新しいやり方があったり、いろいろな流行りや考え方のバリエーションもあったりします。いろいろな子育てがある、ということを知るのは興味深いです。

そんな私の興味もあって、赤ちゃんの夜泣きをテーマに、私の周囲で聞いた話をまとめて記事を書きました。ご覧いただけるとうれしいです。

ママのための子育て情報WEBマガジン「ママスタセレクト」
海外では赤ちゃんの夜泣きは放置、じゃなかった!?意外と違った夜泣き対策の王道

赤ちゃんの夜泣きを放置する、というやり方がフランスなどヨーロッパの国では主流らしい、という話を昔聞いたことがあります。そんなことできるのかな、心配にならないのかな、と、私はちょっと疑問だったのですが、ヨーロッパのいろいろな国の人の話を聞いてみて、ヨーロッパの人も、そんなに簡単に泣く赤ちゃんを放置できるわけではない、と思いました(もし、私がフランスに行って同じ質問をしたら、放置が主流!と言われてしまう可能性は残っていますが)。

赤ちゃんがかわいくてしょうがないと抱き上げる様子や、泣いてばかりの赤ちゃんを何とかなだめようとする様子など、どの国の人も同じに見えます。子育ての文化的な違いばかりに目が行きがちですが、同じところもたくさんあります。子育て中の親というのは、みんな同志なのだと思います。


野口由美子

2016年10月15日土曜日

子どもの貧困対策、計画策定は都道府県の「努力義務」。さらなる地域格差を生むか

子どもの貧困対策法(「子どもの貧困対策の推進に関する法律」)の成立から3年が経ち、子どもの貧困問題がテレビ、新聞やネットで話題になることも増え、こども食堂といった草の根の活動も広がっているようにも見えます。その一方で、子どもの貧困問題について実感がない、という声も聞かれます。

「子どもの貧困対策法が成立した時、都道府県の対策計画策定が「努力義務」であったことに危機感を持っていたんです。」

子どもの貧困対策センター「公益財団法人あすのば」事務局長を務める村尾政樹さんは、そのような危機感からずっと地方自治体の対応を注視していました。そして、共同研究プロジェクト(首都大学東京子ども・若者貧困研究センターと日本大学、公益財団法人あすのばによる、子どもの貧困対策「見える化」プロジェクト)のメンバーとして参画し、全国的な調査を実施、2016年8月には、「都道府県の子どもの貧困対策事業調査2016」として結果が公表されました。


なぜ調査が必要だったのか

今回の調査に先駆けて、2015年に、子どもの貧困対策について各都道府県の計画策定状況を把握する調査が実施されました。計画策定済みの自治体は多く、まだ策定ができていない自治体も計画策定の予定あり、という回答がほとんどでした。子どもの貧困対策法に定められた「努力義務」はある程度果たされているようでした。

しかし、肝心の中身はかなりのばらつきがあった、と村尾さんは説明します。独自に具体的な計画を策定している自治体がある一方で、大綱(2014年に閣議決定された「子どもの貧困対策に関する大綱」)を「コピペ」しただけのような計画も見られました。

「やる気のある自治体では取り組みが進む一方で、手探り状態のまま進展がない自治体も出てくる可能性がありました。このままでは地域ごとの対策に格差ができてしまう。それならば、都道府県の取り組みを「見える化」して、他の自治体が参考にできるような良い取り組み(グッド・プラクティス)を情報として提供できたらいいのではないかと考えました。そういう目的で都道府県が実施する子どもの貧困対策事業を調査したのです。」

子どもの貧困対策グッド・プラクティスとは
震災の影響で回答が不可能であった熊本県を除き、すべての都道府県から調査の回答を得ることができ、さらに独自に新しい試みも行われていることが明らかになりました。調査結果から、特に独創的で先進的と考えられた15の事業は「グッド・プラクティス」として報告書の中で紹介されています。


(出典:都道府県の子どもの貧困対策事業調査2016
報告書)


調査から見えた、すべての自治体に必要な取り組み

さまざまなグッド・プラクティスがある中、今最も重要な取り組みは何か、村尾さんに尋ねました。

「「先ずは子どもに一番近い地域で子どもの貧困について理解してもらわなければいけない」ということがいつも大切だと考えています。」

実態に基づいた対策を行うために、まずは声を聞く仕組みを作ること。これはどの都道府県にも必要な取り組みである、というのが村尾さんの指摘です。

たとえば、グッド・プラクティスに選ばれている長野県の「子どもの声アンケート」や神奈川県の「かながわ子どもの貧困対策会議・子ども部会」などのように、子ども自身や、子どもに寄り添う団体や支援者の声を直接政策に反映させていく仕組みをすでに作っている自治体があります。貧困の実態を把握することは難しい場合も多く、「声を聞く」仕組み作りはどの自治体にとっても参考になるのではないでしょうか。


地域格差を生まないために

都道府県による取り組みは始まったばかりで、政策の効果を評価することまだできません。しかし、調査や分析を継続していく中で、より良い事業を特定していくことができるではないかと考えられます。そのような良い事業については、法律改正や国の大綱見直しを通して各都道府県の必須事業として義務化されることが、プロジェクトの一つの目標です。

次のプロジェクトでは、市町村を対象に、子どもの貧困対策に関する調査を行う予定です。調査分析を積み重ねて、地域格差ではなく、各地域に根差した子どもの貧困対策を後押ししたい。調査にはそのような「想い」も込められています。

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子どもの貧困対策センター公益財団法人あすのば ウェブサイト

毎月500円から継続寄付「あすのば応援団」メンバー募集中

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参考:都道府県の子どもの貧困対策事業調査2016報告書(2016年8月)
    子どもの貧困対策計画の策定状況に関する調査結果(2015年12月8日)



野口由美子


2016年10月6日木曜日

もらって一番嬉しかった!子どもの誕生日プレゼントは意外な物

子どもの誕生日プレゼント、何にするのか選ぶのは難しいと思いませんか。

子どもたちも大きくなるにつれて、だんだん自分の欲しい物をリクエストします。それを買ってあげれば、子どもは喜ぶだろうけれど、欲しがるからって何でもあげていいのだろうか、と迷うこともあります。だからといって、大人好みの知育玩具をあげても子どもが全く興味を持たずに遊ばなかったら、それももったいない話です。

私の8歳の息子と5歳の娘も、やっぱり誕生日には毎年たくさんのプレゼントをもらいます。じいじやばあば、おばさんなどの親せきや友達。

たくさんのプレゼントをもらった中で、子どもにとっても親にとっても今までで一番よかったと思う物は、

色鉛筆のセット

です。

地味だし、プレゼントしなくても持っている子が多いだろうし、あまり嬉しくないのでは、と思われるかもしれません。

下の子の5歳の誕生日に友達のお母さんが色鉛筆のセットをくれました。
もらった時は、うちの子が好きなプリンセスがついたキラキラした他のプレゼントに埋もれてしまい、本人はあまり気にも留めていないようでした。

色鉛筆といっても、子ども向けの物ではありません。画材屋さんで売っているような大人向けの本格的な色鉛筆が18色セットになっていました。子ども向けの色鉛筆より高価な物なので恐縮してしまいましたが、もっと値段の高いおもちゃもたくさんあることを考えると、おもちゃよりも価値があると考えて用意してくれたのかもしれません。


子どもも「いい物」に気づくようです


半年ほどたってみると、誕生日にもらったプレゼントの多くは使われなくなっていきましたか、その色鉛筆はいつも彼女の机の上に置いてあることに気づきました。絵を描いたり、手紙を書いたりするときは、いつもその色鉛筆を使うようになっていました。なぜこの色鉛筆ばかり使うのか娘に聞いてみたところ、

「だって、大好きだから。」

すっかり気に入っているようでした。


下の子が最近よく描く風景。お日様が黄色、ちょうちょの形など、文化の違いも感じますが。

それまでは、日本で買った子ども向けの色鉛筆24色セットを使っていたのですが、プレゼントでもらった方の色鉛筆ばかりを使っています。乱雑に扱って折ってしまうこともなく、いつもきれいに、きちんとケースにしまって大切に扱っていました。


「いい物」で子ども自身が変わる? 


プレゼントの色鉛筆で、子どもの絵の描き方も変わりました。特に違いが顕著なのは、もともと絵を描くのがあまり好きでなかった上の子です。

上の子が絵を描くと、面倒くさがって色をほとんど塗らないまま終わってしまうのですが、この色鉛筆を手に取ったら、きれいに色を塗って絵を描くようになりました。

「色を塗るのが楽しい。」

と本人が言っているのには驚きました。

色鉛筆が変わっただけで、絵を描くことがそんなに楽しくなって、こんなにカラフルで丁寧な絵を描くようになるのか、と私は感激していました。


上の子作。上手ではありませんが、丁寧に描くようになりました。



こちらも上の子作。オランダの家だそうです。


私もこっそりこの色鉛筆を手に取ってみました。色がすっと鮮やかに紙に広がり、スムーズにリズミカルに、手をもっと動かし続けたくなりました。

地味だけれど、ずっと大切に使える「いい物」。私もそんなプレゼントを子どもにあげたいと思いました。


野口由美子

2016年9月28日水曜日

早期教育反対!の私が見たイギリスの幼児教育

早期教育、というと、どういうイメージがありますか?

早期教育は日本に限らず、今の時代の流れであるように感じます。日本よりもイギリスの方が、幼児教育に熱心なくらいでした。日本でも小学校が始まる前に、自分の名前が書けたらいいのでは、とひらがなを教える家庭や幼稚園は多いと思いますが、イギリスでは4歳から学校が始まるので、それまでにアルファベットで名前くらい書けるようにしたい、とナーサリー(保育園)の先生に言われたこともあります。

小さい子どもはのびのび自由に遊ぶことが大事、という考え方も根強く、早期教育には疑問を持つ方も多いと思います。いわゆる読み書きや数を教えるような教育は、あまり早くからできるようになっても、成長するにつれて、それほど差はなくなってくるような印象です。

私自身はずっと早期教育反対派で、上の子は、日本の保育園で年少さんの終わりまで、のびのび過ごしていました。ひらがなの読み書きは、ほとんどできませんでしたし、鉛筆も持ったことなく、クレヨンで絵を描いていました。

その状態でイギリスに引っ越し、上の子が現地の学校に編入しました。クラスの同い年の子たちは鉛筆を持って字を書いていました。

こんなに違うのかと、とても驚いたのですが、学校の先生が言った
「大人は子どもが学ぶ準備できるのを待ってあげてください。」
というアドバイスは、とても印象に残りました。

その時のことを記事に書きました。

ママのための子育て情報WEBマガジン「ママスタセレクト」
早すぎる?幼児教育への疑問に答えた先生の一言

私の早期教育に対する見方は、大きく変わりました。読み書きといった学習に限らず、大切なことは小さなうちから、触れさせてみることはいいことなのではないか、と考えるようになりました。

「子どもにはまだ早い」と杓子定規に考えるのはやめました。それと同時に、準備ができていなかったら、その時は諦めればいい、と固執しないことも学びました。

結局、子どもの才能は無限大!なんて過度な期待をしないという幼児教育に懐疑的な心持ちのままで、ずっと過ごしていたわけですが、子どもは至ってマイペースながら、自分なりのやり方で力をつけていくようです。


野口由美子








ママのための子育て情報WEBマガジン「ママスタセレクト」


早すぎる?幼児教育への疑問に答えた先生の一言

2016年9月25日日曜日

赤ちゃんにやさしい気持ちでいるには?

ママのための子育て情報WEBマガジン「ママスタセレクト」に記事を掲載していただきました。

初めての赤ちゃんに疲労困憊、当時の私に私に渡したいもの

私の子どもたちはもう学校に通うくらい大きくなりましたが、子どもがまだ小さな赤ちゃんだった時のこと、特に初めての子どもが産まれたばかりの時のことを思い出すと、


なんであんなに大変だったんだろう、


とちょっと気恥ずかしくなるくらいに、当時の大変さがよみがえってきます。


「赤ちゃんの世話はこうしないとダメ!」

というような思い込みもたくさんありましたし、
自分が母親なんだから!」
という責任感もすごく強かったと思います。

一生懸命過ぎて、とても疲れていました。実際に、当時の私だけでなく、本当に一生懸命なお母さんはたくさんいると思います。


初めてだから、私自身、なかなか気が付くのは難しかったのですが、もう少しゆっくり、余裕をもっていられたら、初めての赤ちゃんとの生活がもっと楽しいものになっていたのではないかと思います。


時には人に頼ったり、助けてもらうことのありがたさも、子どもが産まれてから本当に理解できたような気がします。助けてもらうと、自分も人にやさしくできるようになりました。


そのことがわかるまでに私は時間がかかりましたが、これから赤ちゃんを産む人や今赤ちゃんと一緒のお母さんにはもっと肩の力を抜いて、やさしい気持ちで、今の時間を楽しんでほしいと思います。

赤ちゃんだって自分とは違うひとりの人間、思った通りにならないのが当たり前、そういうことも含めて、赤ちゃんとの生活を大切にしてほしいです。



野口由美子

2016年9月20日火曜日

東京新聞で当ブログが紹介

こんにちは。野口由美子です。いつも当ブログをご覧いただきありがとうございます。

今回は東京新聞朝刊(神奈川版)で、当ブログを紹介していただきました。
東京新聞 TOKYO Web (神奈川)でも記事を読むことができます。

<安保関連法成立1年 みんしゅしゅぎって> (上)多数決って正しいの?(2016年9月16日)

かこさとしさんの絵本「こどものとうひょう おとなのせんきょ」を取り上げた私のブログ記事について触れられています。

最近の日本の政治状況と、この絵本を重ねて、「多数派の正義」が横行している、と思われる方がいるかもしれません。でも、問題はそれだけなのかと思います。この絵本の素晴らしいところは、そういう短絡的な話に終始しないところです。手に取っていただけるとわかります。ここで、私たちには「少数でもいい意見」があったのか、ということも考えなくてはならないと思います。もっと議論ができないのか、と。

今回取材していただき、そんなことを考えました。


野口由美子


2016年9月9日金曜日

子どものスイミングに盛大な拍手が沸き起こる日

この夏はオリンピックでの日本人選手の活躍に熱中された方も多いと思いますが、我が家では、もうひとつ、息子の水泳検定試験という大きなイベントがありました。

水泳の検定なんて、一大イベントなの?
と、私も不思議に思っていたのですが、オランダの水泳検定には、親せき、家族総出で応援に来る、とか、子どもにプレゼントを用意してあげる、とか、そんな話を聞きました。オランダの子どもにとっては大切なイベントのようです。

 ディプロマ取得が子どものステータス

オランダは、至る所に運河があり、その景観がきれいなのですが、柵がないので子どもが落ちる事故が起きてもおかしくありません。そのため、運河に落ちても溺れることがないよう、国民皆水泳を目指しています。学校授業で全員がやるわけではないのですが、多くの子どもは、国が定めるディプロマを取るためにせっせとスイミングレッスンに通います。個人差はありますが、5歳くらいから始めて1年程度で取得する子が多いようです。

検定試験は盛大に

検定当日、会場には、本当に家族総出、という感じで応援に来ている人たちであふれていました。

盛大な音楽と共に子どもたちが入場。拍手がわきます。

先生の合図のもと、順番に泳いでいきます。
運河に落ちても大丈夫というサバイバル水泳だけに、最初は着衣水泳。
Tシャツに短パン、靴を履いて、
立ち泳ぎ10
さらに25m泳ぎます。



その後服を脱いで、
飛び込み、3m先のロープをくぐり、平泳ぎ50m、仰向けになって50mなど、
いろいろなことをやるのですが、クロールや背泳ぎをきれいなフォームで!という感じではないところも、また日本との違いを感じました。

服を着ていても、足のつかない深いプールでも、自信満々で泳ぐ子どもたち。応援したり写真を撮ったり熱心な家族。

最後は検定の合格証が手渡されました。音楽が流れる中、全員でプールサイドを1周します。



 会場は大盛り上がりです。



うわさに聞いていた通り、一大イベントでした。

子どもの成長を祝う行事は、日本でもいろいろありますが、こんな派手な水泳検定のお祝いも、なかなかよかったです。うれしそうな、自信をつけた子どもの表情が違いました。もっと子どもを祝ってあげればいいんだな、と思いました。


野口由美子

2016年9月1日木曜日

テレビの中の障害者、子どもはどう思う?

BBCの幼児向けチャンネルに障害者

子どもたちが観ているテレビ、ある時、私は、右腕の肘から先がない女性が出演していることに気づきました。彼女は半袖のシャツを着て、手のない右腕を隠そうともせず、不自由そうなそぶりも全く見せず、他の出演者と同じようにテレビに映っていました。

イギリスに住み始めた時から、私の子どもたちは、シービービーズ(Cbeebies)をよく観ていました。シービービーズというのは、BBCの幼児向け番組のみを放送しているチャンネルです。日本のNHKのEテレに近い感じです。朝の6時から夕方7時まで、毎日放送していて、対象年齢は6歳くらいまで。イギリスの子どもたちにはおなじみのチャンネルです。日本でも、「チャギントン」や「ポストマンパット」など、シービービーズで放送されている番組をご存知の方もいると思います。

その幼児向けチャンネルに障害者が出ています。彼女を初めて見て、私はドキッとしました。内心、戸惑いましたが、テレビの中の彼女は、そんな私の気持ちをよそに、視聴者から送られてきたカードを楽しそうに紹介していました。

子どもたちの様子をちらっと見ました。気が付いていないのか、特に何も言わずに、テレビを観ていました。

なぜ腕のない女性がテレビに?

彼女について興味を持った私は調べてみました。彼女の名前は、ケリー・バーネル。過去には、彼女のテレビ出演が、イギリス国内で大きな議論を巻き起こしたこともわかりました。

2009年にシービービーズで彼女の出演が始まった当初は、
「子どもが怖がって、夢に出ると泣いている。」
「彼女の姿を幼い子どもに見せる必要があるのか。」
と、保護者の苦情が殺到したそうです。

しかしケリー自身の意見は、
「知らないことが偏見につながる。差別になる。私自身が、子どもと一緒に障害について話すきっかけになりたい。」
と、苦情に対して驚きや戸惑いさえも感じていなかったようでした。

苦情や批判を乗り越えて、今も幼児向けチャンネルに出演を続けている彼女のことを、子どもと話さないのはもったいないと思いました。

5歳の娘から見た障害

「ケリーってどう思う?」
私は5歳の娘に聞いてみました。
「好き。だってかわいいから。」
娘はケリーの手がないことに気づいていないのかも、と疑問に思い、私は直接言ってみることにしました。

「ケリーは片方の手がないよね。」
娘ははっとした顔をして、
「そうだあ。」
と、顔が暗くなりました。泣きそうです。
「どうして、ケリーは手がかたっぽないの?」
と娘は私に聞いてきました。

「生まれた時からないんだって。そういう人もいるんだよ。でも、元気だし、他の人と同じようにやっているよね。」
生まれつきの障害であることを知り、ケリーはそれでも元気、ということに安心したようでした。こわばっていた顔がほっとした様子になりました。

新しいことを発見するたびに「なんで?」と聞いてくる、いつもの質問と同じようなやりとりでした。障害のことも、理由が娘なりに納得できれば、そういうものだ、とそのまま受け入れているようでした。


8歳の息子から見た障害

8歳の息子にも聞いてみました。
「ねぇ、ケリーってどう思う?」
「ああ、腕がないの、ちょっと怖い。」
下の子ではなく、上の子が怖いと思っていたことは意外でした。

「じゃあ、もう観たくない?テレビに出てほしくない?」
「うーん。あんまり観たくない。」
そう言った後、少し考え込んでいました。私は息子が何を考えているのかわからず、黙っていました。

一生懸命考えている表情で、息子が口を開きました。
「でも、この人テレビに出られなくなったら、お金もらえなくなって、食べ物も買えなくなるよね?」
「そうだね、テレビに出るために歌や劇の勉強をいっぱいして、今テレビに出るお仕事しているからね。困ると思う。」
「シービービーズに出るのは難しいんだよね?」
「そうだね、テレビに出るお仕事をするために、勉強している人はたくさんいるからね。その中から選ばれなくちゃいけないから、シービービーズに出るのはすごいことだよね。がんばらないとできないね。」
「うん。やっぱりケリーもテレビに出ていいと思う。」
障害があるからという理由で彼女を認めないのは良くない、と自分で気づいたようでした。

子どもに理解させるのは難しい、まだ早い。そんなことはありませんでした。大人が勝手に難しく考えているだけのようでした。



   ケリー・バーネルへのインタビュー
   ”ONE ARM Kid TV Show Host Creates Controversy | Cerrie Burnell & CBeebies | BBC”



野口由美子

2016年8月27日土曜日

あなたは民主主義に向き合っているか、絵本からの問いを受け止める人々

2016年8月、30年ほど前に出版された絵本が復刊されました。
かこさとし しゃかいの本 「こどものとうひょう おとなのせんきょ」 
という絵本です。 



ネット上での反響から復刊へ

絶版となっていたこの絵本は、かこさとしさんという有名な絵本作家の作品でありながら、あまり知られていませんでした。私の息子が学校の図書館からこの絵本を借りてきて、親子で読んだ時のことを書いたブログ記事が広まり、初めて存在を知った方も多かったようです。

・ブログ記事 「投票って何?」ある絵本に驚きの答え  

・朝日新聞デジタル 「みんしゅしゅぎ」って何? ネットで話題、絵本が復刊 (2016年8月23日) 

 しかし、ブログ記事自体は、単なるきっかけに過ぎませんでした。
この本は、少数でもすぐれた考えや案を、狭い利害や自己中心になりやすい多数派が学び、反省する、最も大切な「民主主義の真髄」をとりもどしたいという願いで書いたものです。
そうあとがきに書かれた作者の思いは、人の心を突き抜く強さで伝わっていったのだと思います。「いいね」やツイート、シェアを通じて多くの方から反響をいただいたことが、復刊へとつながりました。 


異色の絵本 

絵本を紹介した私自身は、失礼ながら、この絵本は人気が出なかっただろうと思いました。人気のある絵本というのは、大抵、子ども自身が楽しめるものであり、子どもに読んであげる大人にとっても楽しいものです。 

「この絵本を読んでどう思いましたか。」
 ブログ記事を発表した後、よく聞かれました。私は
 「絵本に追い詰められているようで、つらかった。」
 と、答えています。正直なところ、全く楽しくありませんでした。絵本の中で大人は 
「あなたは、投票を、民主主義を、勘違いしているのではないか。」 
と作者から批判されることになります。絵本を読みながら、批判されている大人を横で見ている子どもも戸惑っていました。しかし、それが始まりで、私も子どもも一緒に真剣に考えていました。


かこさとしさんの作品には楽しくて人気のある絵本がたくさんあります。あえてこのような絵本を作って、真剣な思いをぶつけてきたのです。今だからこそ、その衝撃を、受け止めようとする人が多いのかもしれません。 


世代を超えて読まれる本に 

復刊を手掛けた復刊ドットコムによると、この絵本は児童書や絵本の売り場に置かれるだけでなく、ビジネス書や実用書売り場で扱われることもあるそうです。これは珍しいことです。幅広い人にこの絵本を届けたい、大人にこそ読んでもらいたい、と考える人が書店にもいるのだと思います。 これは単なる子ども向けの本ではありません。大人も若い人も子どもも、多くの人が手に取って、考えてみてほしいと思います。 

かこさとし著 「こどものとうひょう おとなのせんきょ(かこさとし しゃかいの本)」(復刊ドットコム)


野口由美子