2016年7月21日木曜日

苦手?悩む?ご近所付き合いが変わる 世界で広がる新スタイル

私の友人から、最近面白い話を聞きました。

「私たちが住んでいる通りの住人が参加するフェイスブックのグループができたの。通りに住んでいる人だったら誰でも参加できるのよ。近所にどんな人が住んでいるか、SNSで知り合うことができるの。」

彼女によると、それはソーシャル・ストリートと呼ばれる、新しいスタイルの「近所付き合い」で、彼女が参加しているのは、オランダで最初にできたソーシャル・ストリートだそうです。ソーシャル・ストリートはイタリアで始まり、イタリアだけでなく、ヨーロッパ各国、アメリカ、ブラジルやニュージーランドにも広がっていて、今は400ほどのコミュニティがあるということでした。

Johannes Verhulststraat – Amsterdam
オランダ最初のソーシャル・ストリートができた通り

イタリアのある夫婦の悩みから始まった

「近所で顔を知っている人は何人もいるけれど、普段は職場で仕事をしているし、近所付き合いにあまり関心がない。」
「近所付き合いでトラブルを起こしたくないので、関わらない方が無難では。」
近所付き合いに積極的になれないのは、日本でも海外でも珍しいことではないようです。でも、

「自分に子どもができて、自分の子と一緒に遊べる友達や自分自身も親しく付き合える相手が近所に欲しい」

イタリアのボローニャに住む、ローラルさんとフェデリコさん夫婦は2歳になる息子を持ち、そのような思いを抱いたそうです。しかし、いきなり面識のない近所の家に行って、ドアのチャイムを鳴らす勇気はありません。

そこで彼らは、フェイスブックで近所の人が参加する非公開グループの開設し、このグループのポスターを作って貼っていきました。当初は、近所の数十人と知り合いになって、子どもの遊び相手が見つかれば、という気持ちだったそうですが、2週間後には93人がページをフォローし、3か月後には500人以上の参加者が集まりました。

ネットからリアルな交流へ

ネットで始まったコミュニティは、「リアル」の生活に変化を起こしていきました。

それまではローラルさんとフェデリコさんは近所を歩いていて、よく顔を合わせる人に出会っても、ほとんどあいさつすることがありませんでした。しかし、ソーシャル・ストリートを始めてから、通りの様子が変わったことに気づきます。通りを行き交う人が声を掛けてくれます。通りに面する家々の窓は開かれ、あいさつを交わす人たちがあちこちにいます。お店では、お店の人とお客さんたちが気さくに会話をしています。

この新しい近所付き合いは、ボローニャの奇跡、とイタリア中から注目され、ソーシャル・ストリートという活動となって広がっていきました。

ソーシャル・ストリートの価値

「使わなくなったベッドがある。誰かに譲りたい。」

「近所で美味しいレストランを見つけたい。」

こうした日常の些細なことの多くは、今、ネット上のサービスで解決することができるようになりました。不要品はネットオークションで売ればいいし、レストランの評判はネットで調べることができます。大抵のサービスを簡単に見つけることができるようになりました。しかし、ソーシャル・ストリートには、そこに「お互いの信頼関係」という、ネット上の他のサービスにはない価値を見出すことができます。

「近所に自分が使わなくなったベッドを欲しい人がいたら、わざわざイーベイで売って遠くまで運ぶなんてバカげているだろう。近所の人に行きつけのお店を教えてもらえたら、トリップアドバイザーの点数を見る必要もないよ。」

もっと困った問題もソーシャル・ストリートで解決できます。
「家のプリンターが壊れてしまいました。今日中に論文を印刷できないと提出期限に間に合いません。誰か助けてください。」

夜にあったこんな緊急の投稿にも、近所の人が助けに来たそうです。近所の人同士が助け合えば解決できることは意外と多いかもしれません。

本当は近所同士でつながりたい

私自身、日本に住んでいた時、近所付き合いはあまりなく、そのことを気にかけてさえいませんでした。でも、自分が子どもを持つようになったり、震災のような災害が起きたり、という経験をして、自分の住む地域での関わりが必要に感じるようになりました。そう言っても、日本はヨーロッパ各国と比べて、フェイスブックの普及率が低く、ソーシャル・ストリートの手法をそのまま使うのは難しいかもしれません。

私の友人はこんなことも言っていました。
「明日グループのメンバーが通りの角のカフェレストランに集まることになったの。どんな人たちが集まるのかしら。面白そうだから、家族で行ってみようと思っているのよ。そんな近所付き合いって初めてだわ。面白いわよね。」
ソーシャル・ストリートのようなSNSを利用した近所付き合いは、参加者に役割や義務といったわずらわしさはなく、参加者が自由に楽しめるものなのだそうです。

ネットからリアルにつなが地域住民の信頼関係。ひとつのヒントになるのではないでしょうか。


野口由美子

2016年7月15日金曜日

「ファインディング・ドリー」に感動する理由


子どもたちはもう夏休み。ちょうどオランダでも公開されている「ファインディング・ドリー」を子どもたちと一緒に観に行きました。



日本でも2016716日公開なので、夏休みにお子さんと観に行こうと計画している方も多いと思います。(この記事では、映画を観る楽しみを邪魔しない範囲で、と思っているので、ストーリーにはあまり触れません。安心してください。)

子どもたちの感想は
「楽しかったー!」
何が楽しかったか聞くと、
息子8歳は
「アシカのふたりが面白かったよね。」
5歳は
「ぜんぶ!!ドリーはパパとママとハグしていたね。」

単なる、ハッピーな家族愛、ではありませんでした

いつも通り、ピクサーらしい、ハラハラドキドキ、笑いありの展開が続く、楽しいお話にのせて、家族愛というメッセージを伝えてくれます。子どもたちはそのストーリーを素直に楽しんでいましたし、親子が抱き合うシーンに家族愛を感じていたようです。涙もろくなった私は、情けないことにすぐに涙してしまいました。

でも私にとって、この映画の良かったところはそういう、いつものピクサーディズニー路線、だけでなく、さらに進んだメッセージを感じさせる映画だったことです。

驚きだったのは、主人公のドリーです。1作目の「ファインディング・ニモ」では、ニモの父親がメインだったこともあり、私にとってドリーはおっちょこちょいのわき役という印象だったのですが、本作では、「極度の忘れんぼう」、「物忘れが多い」、だからおっちょこちょい、というレベルを超えて、「記憶障害」というハンディキャップがあることを、観ている側が認めざるを得ないストーリーになっています。

ニモの片方のヒレが小さいという身体的な障害は、1作目では父親のトラウマや過保護に結び付けられていましたが、本作はドリーのハンディキャップは、ドリーの親にとって、深刻な問題には結び付けられていません。むしろハンディキャップが家族の愛情を深めているように感じられます。

娘の友達も「ドリー」

私は映画でドリーの両親のふるまいを観て、娘と同じクラスだった母子を思い出しました。
その女の子は、発達障害で、それが理由でその子のお兄さんと同じ学校に入学することができなかったという経緯があったのですが、娘と同じクラスにいました。その子の話す言葉がはっきりしなかったり、癇癪を起こしたり、ということもありましたが、その子が輪の中にいると他の女の子たちがみんな仲良く遊んでいる様子が印象的でした。クラスの女の子同士がグループを作って、友達の取り合い、みたいなことをよくやっていたのですが、その子がいる時はみんなが一緒に遊んでいました。

その子のお母さんは、子どもが発達障害であることを隠そうとはせず、私や、他の親に自分からそのことを話していました。
「今は私がついていて、安心感が何よりも必要だと思うの。」
バリバリ働いていたそうですが、今は子どもと過ごす時間を増やすために仕事を減らしていました。

その子が自分の言いたいことをうまく言えないでいると、単語を一つ一つ、区切りながら、反復させ、文章で言えるように、いつも時間をかけて子どもの気持ちに付き合っていました。ある時は、私たち親子が先に帰ろうとしていた時、遊べないと癇癪を起こす前に、もう友達が帰ってしまうことを説明し、でも、泣かずにさよならできたら、次にいつ遊べるか、ということを丁寧に話しかけていました。友達が帰るだけでも、かなりの時間をかけて話しているのです。そしてよく手を握り、抱きしめていました。


ドリーの記憶障害もこの子の発達障害も、障害か、欠点か、それとも個性か、聞かれたら、これは個性だと答えたくなります。それが、この映画のメッセージだと思います。しかし、個性だと尊重してあげたくても、その親の立場だったら、その「個性」を子ども自身が前向きに実感できるように、どれだけ苦労をするのでしょう。映画の中だけでなく、実際にそのような努力を惜しまない親の姿を間近に見て、深い愛情に感動しました。


野口由美子

2016年7月6日水曜日

NHK総合「ニュース シブ5時」で当ブログが紹介

こんにちは。野口由美子です。お知らせが続いていますが、今回はテレビ放送のお知らせです。

NHK総合「ニュース シブ5時」で、かこさとしさんの絵本「こどものとうひょう おとなのせんきょ」の復刊について、取り上げられるのに合わせ、当ブログが紹介されることになりました。

放送日時   2016年7月7日(木曜日) 16:50-18:00 「ニュース シブ5時」番組内
放送メディア NHK総合テレビ
放送エリア  全国放送

(放送内容は、急遽変更される場合があります)

絵本の復刊の経緯の中で、当ブログが紹介されることになるようですが、私が絵本を初めて読んだ時の驚き、絵本のメッセージの正しさや強さを、より多くの方に知っていただき、改めて「おとなのせんきょ」を考えるきっかけになるのではないか、と思います。

かこさとしさんのインタビューも放送されるとのことで、私も是非観たいのですが、海外在住だとこういう時不便ですね。私は放送を観ることができません。ご覧になった方から感想をお聞きできたらうれしいです。

よろしくお願いします。


野口由美子


2016年7月1日金曜日

投票って?民主主義って?本質伝える「ある絵本」が復刊へ

こんにちは。野口由美子です。当ブログに訪問いただき、ありがとうございます。

先日の記事、
「投票って何?」ある絵本に驚きの答え 
は、たくさんの方に読んでいただきました。感謝しています。

この記事の中で紹介した絵本、

かこさとし しゃかいの本 
こどものとうひょう おとなのせんきょ

が、復刊されることになったそうです。以下のリンクをご参照ください。

かこさとし公式サイト お知らせ

復刊ドットコム 「こどものとうひょう おとなのせんきょ」

私の息子は、日本語補習校の図書の時間に、アムステルダム日本人学校の図書室でこの絵本を借りてきました。図書室にあった本なので、日本で現在どれだけ流通しているのかわからず、ブログで紹介して読みたい人がいても、手に入らないのでは、と心配していました。復刊されてよかったです。

実際に手に取って、ご覧になった感想をお聞かせいただけたらうれしいです。

多くの方から、
「是非自分も子どもと一緒に読んでみたい。」
というコメントをいただきました。素晴らしいことだと思います。でも、私はあえて、この絵本は要注意だと言いたいです。すごい絵本ですが、子どもも大人も楽しく読める、いわゆる「いい絵本」ではありません。

記事の中でも触れましたが、私はこの絵本の表紙を見て、わかりやすく選挙の仕組みを学べるような、いい絵本だろうと思って子どもに読んであげましたが、読み終えた時は、
「作者に完全にはめられた!!」
と恨めしくさえ思いました。

子どもたちが「民主主義」に則って、自分たちでルールを作り、広場で仲良く遊べるようになるというハッピーエンドのさらに後、最後の2ページに出てくる子どもたちの心配ごと。

大人だけの選挙で多数派となった大人たちは、お金にならない子どものことなんか後回しにして、勝手なことをしている。大人のためのゴルフ場やパチンコ屋ばかりが増えて、子どもが遊ぶ広場はなくなってしまうのではないか。

作者は、家や学校で大人が子どもと一緒にこの絵本を読むことを想定していたはずです。絵本の最後に、子どもとの対比で大人をこれだけ悪く描く、というのは、作者からの私たち大人に対する痛烈な批判です。多分、作者がこの絵本の中で何よりも言いたかったのは、この大人に対する批判だったと思います。私たちは、子どもの前で、いい加減なことは言えません。
「政治が悪い。」
などと言い訳する逃げ道も残されていません。私は、子どもの前ではずかしい思いをしました。内心かなり焦りました。でも、作者からのメッセージを自分なりに受け止め、子どもと共有する良い機会となりました。

どうぞ、子どもと読むときは、覚悟を決めて読んでください。

私は、自分の子どもからだけでなく、記事を通じてたくさんの方からご意見をいただき、いろいろなことを考えさせられました。ありがとうございます。そのことはまた別の記事の中で取り上げていきたいと思っています。どうぞこれからもよろしくお願いします。


野口由美子