2016年8月27日土曜日

あなたは民主主義に向き合っているか、絵本からの問いを受け止める人々

2016年8月、30年ほど前に出版された絵本が復刊されました。
かこさとし しゃかいの本 「こどものとうひょう おとなのせんきょ」 
という絵本です。 



ネット上での反響から復刊へ

絶版となっていたこの絵本は、かこさとしさんという有名な絵本作家の作品でありながら、あまり知られていませんでした。私の息子が学校の図書館からこの絵本を借りてきて、親子で読んだ時のことを書いたブログ記事が広まり、初めて存在を知った方も多かったようです。

・ブログ記事 「投票って何?」ある絵本に驚きの答え  

・朝日新聞デジタル 「みんしゅしゅぎ」って何? ネットで話題、絵本が復刊 (2016年8月23日) 

 しかし、ブログ記事自体は、単なるきっかけに過ぎませんでした。
この本は、少数でもすぐれた考えや案を、狭い利害や自己中心になりやすい多数派が学び、反省する、最も大切な「民主主義の真髄」をとりもどしたいという願いで書いたものです。
そうあとがきに書かれた作者の思いは、人の心を突き抜く強さで伝わっていったのだと思います。「いいね」やツイート、シェアを通じて多くの方から反響をいただいたことが、復刊へとつながりました。 


異色の絵本 

絵本を紹介した私自身は、失礼ながら、この絵本は人気が出なかっただろうと思いました。人気のある絵本というのは、大抵、子ども自身が楽しめるものであり、子どもに読んであげる大人にとっても楽しいものです。 

「この絵本を読んでどう思いましたか。」
 ブログ記事を発表した後、よく聞かれました。私は
 「絵本に追い詰められているようで、つらかった。」
 と、答えています。正直なところ、全く楽しくありませんでした。絵本の中で大人は 
「あなたは、投票を、民主主義を、勘違いしているのではないか。」 
と作者から批判されることになります。絵本を読みながら、批判されている大人を横で見ている子どもも戸惑っていました。しかし、それが始まりで、私も子どもも一緒に真剣に考えていました。


かこさとしさんの作品には楽しくて人気のある絵本がたくさんあります。あえてこのような絵本を作って、真剣な思いをぶつけてきたのです。今だからこそ、その衝撃を、受け止めようとする人が多いのかもしれません。 


世代を超えて読まれる本に 

復刊を手掛けた復刊ドットコムによると、この絵本は児童書や絵本の売り場に置かれるだけでなく、ビジネス書や実用書売り場で扱われることもあるそうです。これは珍しいことです。幅広い人にこの絵本を届けたい、大人にこそ読んでもらいたい、と考える人が書店にもいるのだと思います。 これは単なる子ども向けの本ではありません。大人も若い人も子どもも、多くの人が手に取って、考えてみてほしいと思います。 

かこさとし著 「こどものとうひょう おとなのせんきょ(かこさとし しゃかいの本)」(復刊ドットコム)


野口由美子

2016年8月24日水曜日

朝日新聞夕刊で当ブログが紹介

こんにちは。野口由美子です。当ブログに訪問いただき、ありがとうございます。

朝日新聞夕刊で、当ブログの掲載記事、「投票って何?」ある絵本に驚きの答えを紹介していただきました。

この新聞記事は、かこさとしさんの絵本「こどものとうひょう おとなのせんきょ」の復刊についてのもので、デジタル版ではかこさとしさんの動画メッセージも観ることができます。

ご覧いただけるとうれしいです。よろしくお願いします。

朝日新聞デジタル:「みんしゅしゅぎ」って何? ネットで話題、絵本が復刊(2016年8月23日)


野口由美子

2016年8月20日土曜日

親の介護、子どもの育児、時にはつらいとは言えますか

ママのための子育て情報WEBマガジン「ママスタセレクト」に記事を掲載していただきました。

「育児に介護も、愚痴も言わないでがんばる、は間違い」

ご覧いただけるとうれしいです。

この記事ではダブルケアに触れていますが、実は、私はつい最近までこの言葉を知りませんでした。ダブルケアとは、育児と介護が同時進行している状態です。日本で問題になっているダブルケアについて、オランダではどうやって解決しているのか、記事にしてほしいというのが、編集の方からの依頼でした。

記事を書くにあたって、今住んでいるオランダで介護や育児の問題をどう扱っているか、周囲の人たちに聞いてみました。多くの人は、介護も育児も大変なことがたくさんある、という話をしていました。そして、介護保険や育児支援制度など公的な援助は、かつてよりは削減されている部分も多く、苦労している、ということも聞きました。

オランダでも、介護や育児が社会問題であることには変わりなく、解決策は見つけられていないんだな、とも思ったのですが、大きな考え方の違いも見つけました。

オランダでは、介護や育児をする側が追い詰められることがない、のです。
日本だったら、たとえば赤ちゃんのいる母親が時間なく忙しくしていても、
「母親ってそういうものよ、がんばって!」
と応援されてしまいそうですが、そんな応援はあまりないようです。
「休めばいいじゃない。誰か助けてくれる人はいる?」
と言われます。

そういう環境だったら、介護や育児がつらい時はつらい、と素直に声を上げられるだろうな、とうらやましく思いました。
「つらいって言いにくい、なんて、あなたたち日本の文化の問題ね。自分たちでどうあるべきか考えるべきではないかしら。」
オランダの友人は歯に衣着せぬ、はっきりとした物言いをするので、こんな言い方をしていましたが、その通り、うなずくしかありませんでした。

うらやましがっているだけでは何も変わりません。私たちも、そういう声を聞き合うことから始められるのではないかと思います。もっと自分や周りの人にやさしくなりたい、という思いを込めました。


野口由美子

2016年8月5日金曜日

子ども自身が作って遊んで学べる、我が家理想のテレビゲーム

私の息子がひそかに狙っている、今年のクリスマスプレゼントは、ゲーム機、なのだそうです。ただし、ママには秘密になっています。ママはゲーム機を買うのに反対だから。うかつにテレビゲームの話をしても、「ダメ」と言われるだけ。タイミングを見計らわないと。

私は息子にそう思われているみたいです。

そんな我が家ですが、この夏休みに新しいテレビゲームを解禁しました。

自分で作って遊んで学べるゲーム

Kano」をご存知ですか。子ども向けのPC工作キットで、Raspberry Piを搭載しています。このPCは、レゴのように子どもが自分で組み立てられるようになっています。




レゴみたいなPCなんて面白そうでしたが、私たちが興味を持ったのは、このPCで採用しているKanoOSという独自のOSでした。PC工作キットは現在入手が難しいようだったので、家にあったRaspberry PiKanoOSを入れ、使われていなかったキーボードとマウス、リビングのテレビにつないで、代用しました。

早速子どもと一緒にやってみます。いくつかの遊び方があるのですが、ストーリーモードが一番面白そうです。
昔からあるロールプレイングゲームのように、人々に話しかけ、何をしなければならないのか探ります。そして、その場所ごとにあるイベントをクリアしていきます。イベントは、敵を倒すことではなく、ゲームを作ることです。最初のステージのゲームはPongというピンポンゲームです。




ピンポンゲームをどうやって作ったらいい? 

まず、自分がプレイしてみるところから始まります。もっとうまくできるようになりたいと凝り性の息子は何度も挑戦します。でも、ただゲームに勝って終わりではありません。次のステップでは、ゲームを自分で作り変えます。ここからはプログラミングになります。ボールの大きさや速さ、ボールを打ち返すバーの大きさなどを、画面に出てくるヒントに従って自分で変えてみます。プログラミング自体は、ブロックの組み合わせ、数字や色などのオプションの選択という手順になるので、タイピングができない子でも進めることができます。




ヒントに従って、ゲームを作る方法を学んだら、次は自分で自由に作ってみます。息子は、妹と一緒に遊べるようにするにはどうしたらいいか、パパと一緒に考えました。
「バーをもっと長くしてあげればいいんじゃないかな」
「ボールの速さを遅くするとやりやすいよね」
アイディアをプログラミングして、試してみる、を繰り返します。いたずら好きの息子は、Aボタンを押すと妹が動かすバーの長さが短くなるコードをこっそり入れて、妹とゲームを始めました。

娘は突然バーが短くなる予想外の展開にびっくり。子どもたち2人はきゃあきゃあ大はしゃぎで遊んでいました。

minecraftも、scratchも、盛りだくさん

各ステージにこのようなゲームがあり、アクションゲームだけでなく、お絵描きや音楽のプログラミングもあり、minecraftもあります。息子は早くやりたいようですが、minecraftで3次元の造形をプログラミングするには、その前のステージで2次元の絵を描くプログラミングをクリアしなければなりません。今、息子は絵を描くプログラミングに挑戦しています。

その他にも、scratchも使えますし、自分の作品を他のユーザと共有することができます。他の子が作った作品を見ると、自分もこんなものを作ってみたいと刺激になるようです。

テクノロジーをただ消費するためのものではない

Kanoのアイディアは、6歳の子が、大人の助けなしに自分でPCを組み立てたいと言ったのがきっかけだった。子どもにはまだそんなことはできない、なんて言う必要あるだろうか。21世紀の新しい教育には、テクノロジーをただ消費するのではなく、作って、学んで、遊べる道具が必要だと気付いたんだ。」
「それは世界中の子どもが使えるものであって、家族みんなで楽しむものであってほしい。タブレットの画面を一人で見ているのとは全く違う経験になるんだ」

Kanoの創設者の1人であるヨナタン・ラズフリードマンさんが、TED Talksで語っていました。このKanoのコンセプトは確実に息子に伝わっているようでした。きっかけさえあれば、そしてそれを子ども自身が好きになれば、いくらでも吸収できるものだと思いました。KanoOSは、無料で入手できますし、子どもを刺激する要素がたくさんあります。とてもいいきっかけになりました。

しかし、1点だけ、Kanoには難しい点があります。日本語版がないのです。世界中で使える、というコンセプトからすると、残念です。Kanoの対象年齢は6歳以上、主なユーザーは8歳から12歳だそうで、使われている英語はとても平易です。英語にあまり抵抗がない子には是非おすすめしたいです。

参考: Kano


野口由美子