2017年3月10日金曜日

恩返しではなく「恩送り」を。子どもの貧困、支えてもらった私が「人を支えたい」

3月は卒業の季節。子どもの貧困対策センター公益財団法人「あすのば」で活動している学生たちの中にも、卒業という大きな区切りを迎えた人々がいます。

首都圏学生代表として活躍する高原彩さん(18)も高校卒業を迎えました。高原さん自身、あしなが育英会の奨学金を利用して高校に通いながら、あすのばの合宿運営スタッフや、全国キャラバンの学生代表として、積極的に子どもの貧困に関わり活動しています。立派な学生に見えますが、彼女自身、活動を通じて多くのことを学んだそうです。


高原彩さん(出典: あすのば子ども委員会フェイスブックページ


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「自分はつらいって思っちゃいけないのかな。」自分の気持ちに向き合っていなかった


私は、あしなが育英会の奨学金を借りて高校に通っていました。母と姉と共に、祖母の家にずっと住んでいます。

父が2歳の時に亡くなったので、私自身、父のことは何も覚えていません。写真で見る父の顔しか知らないのです。でも父の写真もだんだん見なくなっていきました。6歳年上の姉は私よりも父との記憶があって、父を思い出して泣いているのを見ることもありました。でも、父のいない生活が当たり前になって、つらいと思わなくてすむように、過去に向き合わないようにしていました。

「子どもの貧困」がテレビや新聞で取り上げられることが増えてきたのですが、そこで取り上げられるのは、小さいころから食べるものにも困っていたり、生活費を稼ぐためにアルバイトを掛け持ちしたり、わたしよりもずっと大変な思いをして生活をしている人ばかり。自分はつらいと思っちゃいけないのかな、と感じていました。


合宿の夜、キャンドルを灯して語られた、ひとりひとり思いを聞いて


高校2年の夏に、あすのば合宿ミーティングに参加しました。貧困家庭の人や支援団体で活動経験がある人など、全国の高校生、大学生世代の人たちが集まりました。合宿では思っていることをそのまま語り合う「シェアのば」というプログラムがあります。初めて自分の境遇について話す人もいました。「さびしい」という自分の気持ちに気づけなかったこと、親に「一緒に死のう」と言われたこと、いろいろな人の生い立ちを分かち合いました。


シェアのば (出典: 子どもの貧困対策センターあすのばウェブサイト


夜には、キャンプファイヤーを行う予定でしたが、雨で中止になってしまい、代わりにキャンドルナイトが開かれました。キャンドルを灯して、先輩たちが自分の思いを語り始めました。とても心を突き動かされました。私は自分の過去と向き合おうとしていなかったけれど、いつかは自分も、と強く思いました。この思いがあって、子どもの貧困という問題に積極的に関わって活動するようになりました。


キャンドルナイト(出典: 子どもの貧困対策センターあすのばウェブサイト



将来の夢は社会福祉士として人を「支えたい」


将来の夢は、社会福祉士です。困難がある人に寄り添いながら支える仕事をしたいと考えるようになったのは高校3年になってからです。あすのばの活動でお世話になっていた先輩に進路の悩みを打ち明けた時、社会福祉士という資格があることを教えてもらいました。社会福祉士は、高齢者、低所得者、子ども、障害者などさまざまな福祉分野をカバーします。自分がどの分野に特化していきたいのか、広く勉強してから考えたいと思いました。そのためにも、社会福祉に強い大学への進学を希望することにしました。

大学受験は、推薦入試を目指し、学校の勉強をがんばってきました。でも、私が行きたかった大学の指定校推薦は学年で成績1番の子が取るらしいと知って、私には無理だと諦めました。AO入試に切り替えることにして、AO入試の出願をした後、私が指定校推薦枠に入れることがわかりました。とてもうれしかったのですが、指定校推薦を受けるために受験料を再度払わなくてはなりません。受験料は高いので、受験にかかるお金のことを考えるのは、勉強よりもつらかったです。


近くで支えてくれる人がいたから、今の私がある


私自身おばあちゃんと一緒に住むことができて、おばあちゃんが支えてくれたから生活できていると思います。父が亡くなったばかりの時、隣に住んでいた方が遺族年金のことなど、生活に必要な情報を母にいろいろ教えてくれました。母は地域の人たちに支えられて生きてこられたと思います。SNSだけでは作れない、近くにいる人同士のつながりが必要だと思います。近くにいる人が目を向けることで、救われる人がいるということを多くの人に知ってもらいたいです。


あすのばの仲間たちと(出典: 子どもの貧困対策センターあすのばウェブサイト

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周囲に支えられながら大きく成長した高原さんは、今度は自分が支える人になりたいと、新しい道を歩み始めます。恩返し、ではなく、恩送り。彼女が気づいたことは私たちにとっても大切なことではないでしょうか。


野口由美子



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