2018年3月8日木曜日

海外生活に疲れたかも、と思う時

早いものでヨーロッパで暮らしも、もう5年が過ぎました。いまだに、日本とは違う文化、考え方に戸惑うことがあります。相変わらず自分は海外生活に向いていない、と思いつつ、それでもなんとかなるのだから、大丈夫、すっかり気が緩んだ生活を送っている私でしたが、そういう時に失敗はやってくるものですね。これまでで最悪の大失敗をしてしまいました。

娘の友達はイスラム教徒


先日、娘の仲良しの男の子がうちに遊びにくることになりました。娘が男の子を家に呼んで遊ぶのは初めてのことで、娘だけでなく私も楽しみにしていましたが、ちょっと気がかりなことがありました。

その子のお母さんは、いつもヒジャブを被っています。イスラム教徒の家庭の子。

子供同士で家を行き来するようになると、ほとんどのお家では、食事をご馳走になってきます。食事の時間が早い家庭が多いので、放課後から夕食の時間も一緒にしてもらうことが多いのです。他の子と区別することなく、その子にも同じようにうちで夕食を食べて行ってもらいたいけれど、いいのだろうか。イスラム教徒の方を家の食事に招待したことがなかった私は、確認すれば大丈夫だろうと思い、その子のお母さんに聞きました。

「豚肉はダメ。ハラルの肉か鶏肉は大丈夫だけれど。」

「わかった。息子さん、お寿司好きって言っていたから、かっぱ巻きとサーモンのお寿司を夕食に作ろうかな。」

「寿司!! 息子は大好きよ。きゅうりとサーモンなら大丈夫。」

そんなやりとりをしていました。

日本にいた時は巻き寿司なんて自分で作りませんでしたが、
今は寿司好きの友達が来る度にお寿司を巻きますね。


鶏肉はOK、という思い込み


当日、お寿司は大好評で、作っていた分があっという間になくなりました。その男の子は私の予想以上の食欲で、

「まだお腹空いてるなー。もっとないの?」

「ごめん。作ったお寿司は全部食べちゃった。どうしようか。」

冷蔵庫をごそごそ探して、私はチキンナゲットを見つけました。

「これどうかな?」

「豚肉入っている?ゼラチンは?」

男の子は慎重でした。心配そうだったので、一緒にパッケージの原材料を見て豚に関する表示はないことを確認しました。そして、私はその子にチキンナゲットをあげてしまったのです。

ハラルとは? 私の完全な誤解


その日の夜にその子のお母さんからメッセージがきました。
今日はありがとう、息子も楽しかったと言っていた、という言葉に続いて、

「息子がお宅でチキンナゲットを食べたって言っているけれど、本当?」

と書いてありました。

はっとしました。

私はそのメッセージを見て、初めて自分がやってはいけないことをしたと気づきました。

私はハラルの意味がわかっていなかったのです。

鶏肉は大体の人が食べられるから無難というイメージがあったので、お母さんの言っていることを勘違いしていたのです。本当は鶏肉もハラルでなくてはならないという意味でした。

私はひたすら謝罪のメッセージを送るしかありませんでした。このことがどれくらい彼らにとって不快なことなのか、私がどれくらい罪なことをしてしまったのか、それすらも私にはよくわかりませんでした。

犬が好きな人に犬の肉を食べさせるような感じだろうか。虫が入った食事を出すような感じなのか。いろいろ考えてみても、自分の日本人的な信仰心では想像できそうにありません。どうしたらいいかわからず、その日の夜はあまり眠れませんでした。

逃げたい気持ちとわかり合いたい気持ち


数日後の朝、教室の前でそのお母さんを見かけました。私はこっそり逃げ出したいという気持ちが一瞬よぎりましたが、思い切って彼女の肩をたたきました。もう言葉も見つからなかったのですが、あの日の夜のメッセージと同じことを繰り返し、ひたすら謝りました。

「それはもういいの。息子はまだ小さいから、この違いはわからない。私は絶対やらないことなのは確かだけれど。この子もだんだん理解していくことだから、わからない今はいいの。私は親だから、この子が何を食べたか知っておきたかっただけ。何よりも、息子は〇〇(私の娘)の家で遊んでとても楽しかったって喜んでいたのよ。」

その言葉を直接聞いて、少しはほっとすることができました。やっぱり直接声をかけてよかったです。イスラム教でも信仰に対する考え方はいろいろ違いがあるのだろうと思いました。そのお母さんはヨーロッパ生活が長いので、食事に対してもある程度許容できる幅があるのかもしれません。海外で生活を続けることに、私の比ではない苦労があるのだろうし、その中で身につけたのかもしれない寛容さに救われたような気がしました。

海外生活は居心地の悪さに疲れる、けれど


それからさらにしばらく経った今、娘の口からその男の子の話題が時々出てきます。

「いじわるされた。もう遊びたくない!」

というケンカの話が多く、多分その男の子は娘のことを時折からかいたくなるようで、以前と全く変わらない「仲の良さ」のようです。でも、今はそういうケンカの話を聞くと、その子と疎遠になったら気が楽になるんだけれどなあ、と思ってしまう私がいます。

そして、その次の瞬間に、そんな簡単に友達なくしてどうする? 次にその子が遊びに来たら、調理器具やお皿だって完璧に彼のために準備してあげる! という気持ちで、娘を励ましたくなる自分もいます。

自分が意識さえしていなかったことで、失敗してしまう。文化の違いに戸惑ったり、時には気まずくなったり。要領の悪い私の海外生活は、そういうことの繰り返しで成り立っているようなものですが、居心地の悪い所にいるから初めて気付けることがある、と改めて思い直しています。


野口由美子

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