2018年6月23日土曜日

海外で、日本で、子どもの英語教育方法を知る

「海外でも英語教育、バイリンガル教育に熱心な親は多い。」

とつくづく思います。私はもともと、「子どものうちはのびのびと!」というタイプで、英語に限らず教育に対してあまり熱心ではありませんでした。しかし、今私の周りにいるのは教育熱心な親ばかり。私より英語ができるのにまだ足りないのかと不思議なくらい英語教育重視の人が多いです。さらにヨーロッパの小国にいると複数の言語ができて当たり前。そんな(ちょっと特殊な)環境で、子どもの成長を目の当たりにしていくうちに、私もすっかり考え方が変わりました。今は自分も英語教育に熱心な親のひとりとなったと思います。

子ども英語教育について、学校で開かれるワークショップや講演に参加したり、他の方の体験談を聞いたり、いろいろな話を聞いてきました。ここで(自分のためにも)今まで聞いてきたことをまとめておこうと思います。英語に限らず、第2言語「習得」の話が多かったのですが、最近聞いた講演では第2言語「忘却」という別の観点で英語教育の話も聞きました。

忘却というのは、たとえば、海外生活からの帰国後に海外で話していた言語を保持するにはどうしたらいいのか、といったことを想定しています。習得と忘却、真逆の観点ですが、どちらから見ても結局同じ結論に至るように思え、実はバイリンガル教育には王道があるのではないかと考えるようになりました。

・英語教育、いつからがベスト、というのはない


幼児期から英語教育を始めるべきとか、始めるべきではないとか、そういう論争は繰り返し起きている印象ですが、いつがベスト、という結論はないそうです。ただ実際に赤ちゃんはお腹にいる時から複数の言語の違いを聞き分けていて、小さな赤ちゃんからバイリンガル教育を始めることができます。お父さんとお母さんの第1言語が違う家庭は、胎児の時からバイリンガルが始めることが多いと思います。

小さな子どもの言語習得の利点は、やはり発音だそうです。言葉の発音を聞き分ける能力は幼い子どもの方が優れていて、10歳くらいでその能力は衰えてしまうこともわかっています。しかし、幼いほど言葉を忘れてしまうことも簡単です。

むしろ大きくなってから勉強を始めた方が、最初から文法など体系的な理解ができるので、効率的である場合もあります。しかも幼い子どもよりも忘れにくく、定着します。

かつては私も早期英語教育は維持が難しいという理由で反対していましたが、大きくなってから、たとえば中学生から英語の勉強を始めても、語学のセンスがある人しか英語を身につけられない、と諦めている部分がありました。

しかし、幼い時から始めても、大きくなってから始めても、どちらの場合でもバイリンガルにはなれるそうです。確かに、英語だけでなく、フランス語、ドイツ語と複数の言葉を使いこなせる人がたくさん周囲にいますが、誰もが幼い時からいろいろな言語を学んでいたわけではなかったです。そこには、ヨーロッパの言語の多くが、日本語よりもお互いに言語的な近さがあり、日本語よりハードルが低いという有利な点はあると思います。

でも、言葉が近いといっても、自然にできるようになったわけではなく、教育をしっかり受けてきた人はきちんとした言葉を話す一方で、不正確な言葉を話す人もたくさんいることにも気づきます。何歳で始めるかということより、いかに教育を提供できるかということが大切なのだと思います。

ただし、そのような状況を踏まえたうえで、結果的には英語教育の早期化が流行っているように感じます。オランダの現地校では10歳から英語教育を行うのが標準だそうですが、今は4歳5歳から英語の授業を行うとアピールする学校が増えました。幼児期から始めた方が有利、と考える人が増えているのではないかと思います。

・「読む」ことがカギ


子どもが言葉を学ぶには、聞くことから始まり、だんだん話せるようになってくるのが自然な流れです。子どもが自ら第2言語を話すようになると親としてはうれしいものです。しかし、言語を身につけるときにカギとなってくるのは、話すことよりも読むことだそうです。

読むことにより、聞く、話すだけでは不十分になりがちな、文法や語彙などの知識をより強化することができます。また、言葉を忘れずに維持していくにも読むことが有効なのだそうです。たとえば、海外生活から日本に帰国した場合、外国語に触れる機会が急に減って、言葉を忘れてしまうわけですが、読む能力は聞いたり話したりする能力よりも衰えにくいのだそうです。

日本にルーツがあるけれど、一度も日本に住んだことがない知人がいます。彼女は日本語を使うことに全く支障がありません。彼女から送られてくるフォーマルなメールを読んでも、不自然な表現や文法の誤りもほとんどありません。彼女は子どもの頃からずっと日本のマンガを読むのが好きだったそうです。もちろん海外で日本語補習校に通うといった努力もあったそうですが、(マンガであっても)日本語を積極的に読んできたことがよかったと実感しているそうです。

・文法は軽視できない


日本で中学生から英語の勉強を始めた私は、自分が文法偏重の英語学習で失敗してきたような気がして、言葉を学ぶには文法よりももっと大切なことがあるはず、と思っていましたが、文法を軽視することはよくないそうです。

幼い子どもが言葉を簡単に忘れてしまうのは、文法などの言語の基礎がしっかりできあがっていないからだと考えられています。正しい言葉を定着させるには、文法も当然大切になってくるのです。

子どもの学校(ブリティッシュ・スクールなので、アメリカン・インターナショナル・スクールなどとは違うところもあるようです)では、7歳の基礎段階から英語の名詞、動詞、形容詞とは何か、主語と述語の関係といった文の構造も授業で扱われていて、驚いたことがあります。そして、文法を説明するだけに終わらせず、それを使いこなせるように文章をたくさん書かせます。同じアウトプットでも話すことよりも書くことの方が難しいものです。語彙、綴りや文法があまりできなくても話すだけなら何とかなりますが、書くときにはごまかしがききません。聞く、話す、ばかりでなく、言葉が少し理解できるようになってきたら、読み書きも始めることが必要なのだそうです。

・長い目で見ないと本当の成果はわからない


複数言語の習得は、子供にとって負担、第1言語の習得に遅れが出る、他の分野での成績が悪くなる、と考えられることが多いと思いますが、実際にはバイリンガルが学業に悪影響を与えるということは証明されてはいないそうです。

ただ、言語を習得する過程には個人差があるので、ある子にとっては容易にできることもほかの子には時間がかかることもあります。学校の成績が芳しくないと、うちの子は遅れている、とか、バイリンガルには向いていない、と思ってしまいがちですが、それは一時的なことなのだそうです。長期的には、複数言語を習得することは、そのほかの学業全般にも良い影響を与えるとされています。

しかし、「長い目で見る」ことが難しい場面はたくさんあります。現実的には日本の学校教育のように学校のカリキュラムには第2言語教育がきちんと組み込まれていないと特に、子どもの成績が伸び悩んでいるときに、親が第2言語の勉強を重視し続けるのは親としても苦しいと思います。

私自身、自分の息子を見ていると本当にそう思います。イギリスの教育と日本の教育の両方を受けている息子ですが、国語(英語、日本語)を含め学業面でもっと努力が必要な段階、とどちらの学校の先生にも同じことを言われます。特に国語は底上げが必要。日本語も英語も、文法的理解が不十分、語彙が足りない、読み書きへの苦手意識が強い、全く同じコメントです。もしも、日本語だけだったら、日本語に触れる時間が格段に増えて、語彙も多くなるだろうし、文法などの理解ももっと深められるのではないかと思うこともあります。

息子はバイリンガルには向いていない、と思ってしまいます。でも、息子のクラスメイトの読み書きのレベルを見てみるとかなり個人差があるのは明白なのですが、何年か経つとその差は少しずつながら狭まっているようにも思います。かなり高レベルな子が同じクラスにいるのを見ては慌てていた私ですが、3年くらい経つと昔ほどの大きな差が感じられなくなりました。勉強をやめなければ、誰でもある一定以上の水準には到達できるのではないか、というのが今の私の感触です。

・バイリンガルは親から子どもへのプレゼント


学校の先生からも、言語学の先生からも、よくこのようなセリフを聞きました。子どもの能力や周りの環境が大事ではないかと思っていた私にとって、すべてが「親次第」と言われているようで戸惑います。どうやら、学校などで勉強しているから、というだけでは複数言語を使えるようにはならないということのようです。

一番近くにいる親がどのようにサポートするかによって、成果は大きく変わります。というと、親も英語ができないとダメなのではないか、厳しく子どもを勉強させないといけないのでは、と思ってしまいますが、そういうことではないそうです。第2言語を使うことに対して、親が肯定的な態度を持っていることが大切なのだそうです。子どもが第2言語を使うことを褒めたり、親も関心を持って一緒に勉強したり、というのが重要なのだそうです。言葉を習得するのは長い時間をかけて地道な努力が必要となるので、決して楽ではないと思いますが、前向きに楽しんで学べるように助けていくのが親の役割です。

子どもにとって、言語を学ぶことの優先順位が下がってくることもあります。その言語を身についけることが子供自身にとってどのような意味を持つのか、家庭や社会の環境によっても変わってきますし、スポーツや音楽など本人のやりたいことがはっきりしてくると第2言語の優先順位が落ちてくるのも当然の流れだと思います。そういう時がきてもバランスを取りながら、長く継続することは容易なことではないだろうと思います。

なかなか難しいものですが、我が家で一番重視している取り組みは、子どもたちが複数の言語ができることは得だと思ってもらえるように、子どもが喜びそうな本やテレビ番組、映画など、せっせと集めることです。

読むことが苦手でも、絶えず周りに本を置いておくだけでも効果あり、でした。


こういう時、日本語はとてもいいですね。本もマンガもアニメも充実していて、子どもにとっても魅力的です。やはり英語の方が圧倒的にコンテンツが多くアクセスしやすいのですが、日本語の魅力が衰えないでほしいです。


野口由美子

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