2018年6月15日金曜日

「ワンダー」映画と原作どちらがいいか

ベストセラーの児童書「ワンダー(原題: Wonder)」映画版が、日本でもちょうど今、2018年6月公開になったそうです(映画の邦題:「ワンダー 君は太陽」)。

ヨーロッパでの公開は去年だったので、原作本のファンだった私は喜んで観に行きました。

"Wonder" (2017)


映画版「ワンダー」を観て


主人公のオーガストは10歳の男の子。障害を持って生まれたオーガストの顔は、周りの大人が顔色を変え、子どもは逃げ出すか、指をさしてじろじろ見るか、「普通」の容貌ではないという悩みを抱えています。そのオーガストが初めて学校に通うことになります。最初は学校で孤立してしまいますが、友達や先生に出会い、家族の愛情を受けながら、いじめに立ち向かい、成長していく物語です。

映画では家族の絆の大切さや友情の力を訴える感動作となっていました。オーガストのお母さん役のジュリア・ロバーツが輝き、オーガストのお姉さんや友達など子役の生き生きとした演技を観ることができます

原作本「ワンダー」の魅力


息子は原作本にのめり込んだひとりで、彼にとっては初めて1冊読み通せた本がこの「ワンダー」でした。

自分がふつうの10歳の子でないって、わかってる。 
I know I’m not an ordinary ten-year-old kid. 

そんな書き出しで始まり、1ページ目の最後には、

ところで、ぼくの名前はオーガスト。オギーとよばれることもある。外見については説明しない。君がどう想像したって、きっとそれよりひどいから。 
My name is August, by the way. I won’t describe what I look like. Whatever you’re thinking, it’s probably worse. 

主人公が語る形でストーリーは始まりますが、最初のページで息子は息を飲みました。主人公に自分を投影することができず親しみが持てない、しかもつらい話が続くのでは、と最初はあまり積極的に読みたがりませんでした。

しかし、本は子どもが読み進めやすいように、ストーリーで深みが出るように工夫されていて、息子もだんだん自分で本を手に取るようになりました。本が苦手な子にも親しみやすくなっています。

  • 話は家族の出来事や学校の授業やランチタイムなど、2ページ程度の短いエピソードが積み重なっていくので、テンポが良く、わかりやすい
  • 主人公だけでなく、主人公のお姉さんや友達などいろいろな登場人物が交代で物語を語るので、いろいろな登場人物の視点から共感できる

そんな工夫のおかげで、オーガストが1年間学校に通い最後の修了式に出るラストシーンまで息子は読み通すことができました。

最後に

「やった!」

と本を片手に心から喜んでいた息子の表情は、息子もオーガストの学校の生徒になっているかのようでした。

息子は、主人公の友達のジャック・ウィルが好きだと言いました。最初はオーガストのことを気味悪いと感じたり、いじめられている彼に親切にすると自分もいじめられることになるのではと恐れたりします。それでもオーガストの素直で機転が効いてユーモアに溢れた性格に強く惹かれ、仲良くなっていきます。息子が一番自分に近い存在だと感じたようです。

映画と本の違い


映画版ではジャック・ウィル役の子(ノア・ジュプ)が本のイメージそのままに、息子の友達にもいそうな自然で「どこにでもいる子」らしく生き生きしていました。

あんなに好きだった本だから、映画も喜ぶのではないかと思い、私は息子を映画に誘いました。

「嫌だよ。観たくない。」

断固拒否されました。怖いのだそうです。自分が想像するよりもっとひどい、と本に書かれていた主人公の顔を映像で見たくない、ということでした。映画の主人公の顔は、原作の表現よりもだいぶ控えめの特殊メイクで、その顔を観ていてつらくはなかったのですが、そう説明してもダメでした。

それだけ強く印象に残った本なのかもしれません。テレビ大好きの息子ですが、今回は本が映像に勝ったということかも、と前向きに解釈をして引き下がりました。

まだ原作を読んでいない人には、映画を先に観ることをおすすめしたいです。映画はとてもうまくまとまっていて感動的で、その後に本を読むとさらにストーリーに引き込まれます。

正しいことをするか、親切なことをするか、どちらかを選ぶときには、親切を選べ

これはストーリーの中で重要な役割を果たす言葉(格言)です。そんなことを大人も考えさせられます。映画を観た後、私もまた本を読みました。繰り返し読みたくなる本です。

(引用: R. J. Palacio "Wonder" Random House Children's Publisher. 
日本語版 中井はるの訳ほるぷ社刊)


野口由美子

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